睡眠について知っておくべき8つの科学的事実(TED「Sleeping with Science」から)
[記事編集履歴:2021年1月9日最終更新]
脳科学者で睡眠に関する動画をTEDに多数投稿しているMatt Waker氏による2020年9月のスピーチのシリーズ(Sleeping with Science*1)を見終わりましたので、後で振り返るのに便利なように、簡単にポイントをまとめました。
なお、本シリーズは全部で8つのスピーチ*2で構成されています。いずれも3分~5分と短めで、Matt氏の英語はかなり聴き取りやすいですので、詳細はぜひ動画を観て頂ければと思います。
<目次>
1.睡眠の種類
- Non REM睡眠(Rapid Eye Movementが無い睡眠):眠りの深さによって、①~④のステージに分けられる。①~②の浅い睡眠では、心拍数は減り、体温が下がり、脳波の活動が静まっていく。③~④になると、逆に脳波が力強く活発になる。このステージにおいて、免疫システムが充填され、循環器系が回復し、記憶が統合される。
- REM睡眠(Rapid Eye Movementがある睡眠):脳波の活動が活性化し、夢をみる。感情の癒しがみられ、創造性の高まりや、難しい問題の解決につながるような情報の再構成が行われる。
- Non REM睡眠とREM睡眠は、90分ごとに入れ替わり立ち代わり訪れる。
- 夜の前半は、Non REM睡眠の③、④ステージとなることが多く、後半はREM睡眠かNon REM睡眠の②ステージとなることが多い。
- もしいつも午後10時に寝て午前6時に起きる8時間睡眠の人が、何かの理由で午前4時に6時間睡眠で起きたとする。そうすると、睡眠時間だけでみると25%のロスだが、眠りの後半に訪れるREM睡眠の時間は50%かそれ以上失われているかもしれない。
2.カフェインとアルコールの影響
(1)カフェイン
- 特徴1:カフェインの効果は、平均的な成人で、摂取から5~6時間後の段階でまだ約50%、摂取から10~12時間後でも、まだ約25%体内に残っている
- 特徴2:カフェインは、Non REM睡眠の③、④ステージの割合を減らす。
(2)アルコール
- 特徴1:アルコールによる沈静状態とNon REM睡眠の深い眠りは別物
- 特徴2:アルコールは、睡眠を分断する
- 特徴3:アルコールは、REM睡眠を妨害する
3.睡眠と記憶
(1)「ファイル転送」作用
- 記憶には、脳の2つの部分、海馬と大脳皮質が使われる。
- 海馬は新しい記憶が得意だがメモリ容量が限られているUSBのようなもの。
- 大脳皮質は、容量の大きいハードドライブのようなもの。
- 深い眠りの間に、海馬から大脳皮質へ、ファイル転送が行われる。
(2)「リプレイ」作用
- 睡眠の間、記憶が高速でリプレイされることで、記憶が強化される。
(3)「統合・連想」作用
- 眠っている間に、新しい記憶どうしの繋がりができ、脳内で整理され、連想の網が張り巡らされる。
- これにより、今までは解決が難しかった問題の解決策を思いつくことがある。
- 新しいことを記憶するには、事前に十分な睡眠をとり、情報を吸収する準備をしておくとともに、事後にもしっかりと睡眠をとって、記憶を強化することが大切。
4.睡眠とアルツハイマー病
- アルツハイマー病を発症すると、ベータアミロイドとタウタンパク質という2種類のタンパク質をコントロールできなくなることが分かってきている。
- 最近の研究で、脳自体に独自の自浄機能があり、これによりベータアミロイドが除去されることが分かった。
- この脳の自浄機能は、24時間ずっと同様に働いているわけではなく、深いNon REM睡眠の間に特によく作用する。
- 一般的に、年をとると睡眠時間が減ってきて、アルツハイマー病リスクはあがる。しかし、睡眠時間を伸ばしたり、中年期における睡眠の質を改善することができれば、アルツハイマー病を予防できるかもしれない。
5.睡眠が感情にどう影響するか
- 睡眠を充分とったグループと睡眠不足のグループに分けて、MRI検査を行ったところ、感情の動き(ネガティブな動きを含む)を司る偏桃体という脳の部位が、睡眠不足のグループにおいて活発に反応していることが確認された
- 睡眠不足のグループは、前頭前野という脳の司令塔の役割を果たす部位と偏桃体との繋がりが弱まり、その結果感情の動きが活発となることが判明した
6.睡眠と免疫
- 睡眠時間7時間以下の人は、風邪への感染確率が3倍以上となる。
- 睡眠時間5時間以下の女性は、肺炎への感染確率が70%上がる。
- 実験によれば、6日間4時間睡眠しかとらなかったグループは、充分な睡眠をとってたグループに比べ、インフルエンザ予防接種による抗体反応が50%未満となった。
- 深いNon REM睡眠中に、様々な免疫因子が作られ、免疫因子への感受性が高まることがわかってきている。
7.必要な睡眠時間
- 平均的な成人は7~9時間の睡眠が必要
- 睡眠量だけではなく、質も大事
8.よりよい眠りのための6つのヒント
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Regularity: 規則正しい時間に眠る
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Temperature: 室温を摂氏18度程度にする
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Walk It Out: 眠くなければ寝室の外へ(ベッドは眠る場所だと脳に覚えさせる)
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Avoid Alcohol and Caffeine: 午後以降はカフェインを避け、寝る前にアルコールを摂取しない
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Wind-Down Routine: 就寝前のルーティンとして、リラックスできる何かをみつける
【おススメ度:★★★★☆】(英語学習への個人的おススメ度です!)
*1:Sleeping with Science | TED.com
*2:厳密にいうと9つですが、9つ目はシリーズの紹介的な内容でした