【TED】お金でモチベーションを買えるか?「モチベーションの謎」
価値のあるアイデアを世に広めていくこと(Ideas Worth Spreading)を使命としているTED*1。
TEDが公式にお勧めしている25個の最も人気の動画を収録したPlaylistがありますので、これを一つずつ観ていっています。
今日の動画は、『The Puzzle of Motivation』(モチベーションの謎)。
クリントン政権の副大統領アル・ゴアのスピーチライター等を務めたDaniel Pink氏による2009年のスピーチ。
18分程度とTEDとしては標準的な長さの動画ですが、非常にパワフルな語り口のスピーチに引き込まれます。
詳細はぜひ動画を観てみて頂ければと思いますが、ポイントは以下です。
- 「あれをしたらこれを貰える」という外的動機付けは、答えが明確でルールが単純な作業のパフォーマンスをあげるには適しているが、創造性が要求される仕事においては、かえってパフォーマンスが落ちてしまうことが実証されている。外的動機付けは、視野を狭くして、可能性を限定してしまうためである。
- 創造性が要求される、答えのない仕事のパフォーマンスをあげるためには内的動機付けが重要であり、そのためには①自分自身で人生の方向を決められる自主性(Autonomy: the urge to direct our own lives)、②何か意味のあることについて成長できること(Mastery: The desire to get better and better at something that matters)、③自分自身より大きな何かに貢献するという目的(Purpose: the yearning to do what we do in the service of something larger than ourselves)、が肝となる。
- 多くのビジネスでは、金銭的報酬によって従業員のモチベーションを上げようとしているが、これは誤りである。
- 自主性を例にとると、Googleの多くの新製品は、エンジニアが好きなことに使えるという「20%の時間」から生まれている。また、Microsoftは、たくさんの予算を使ってEncartaという百科事典を作ろうとしたが、フリーのオンライン百科事典であるWikipediaに敗れた。
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ややもすると、「やりがい搾取」等とブラック企業批判にもつながりそうな内容ではありますが、そもそもいわゆるブラック企業では、充分な金銭的報酬も自主性等も認められていない場合が多いのではないかなと思われますので、一旦横に置くとして。
金銭的報酬が高ければ高いだけ、創造的な仕事や答えが無い仕事に取り組むモチベーションがあがる訳では無いというのは、自分の経験からしても、その通りなのかなと思います。
他方で、創造的な仕事をした結果、副次的に報酬が上がることはあるでしょうから、報酬を上げた結果よい成果が出たのだと勘違いされがちなのかな…。
また、会社のマネジメント層からすると、従業員の自主性に任せてしまうというのは怖いところもあるので、ついきっちりルールで縛った上で、お金を払って従業員のモチベーションを「買おう」としてしまうのかなと思います(特に日系の大企業は、なかなかGoogleのように思い切れない傾向がありそう)。
でも、単純作業がますますAIに奪われていく中で、(一定の適切な報酬があることは大前提として)「自主性・成長・目的」を適切に設定できる内的動機付け重視のマネジメントが、今後国際社会で日系企業が生き残っていくために大事になっていくのかなと感じました。
結構気の利いた表現も散りばめられており、英語教材としてもおススメの一本でした。
【おススメ度:★★★★★】(英語学習への個人的おススメ度です!)
<語彙力UPクイズ>
【脚注に答えがあります】
- youthful indiscretion*2
- dust off*3
- aberration*4
- extrinsic motivator*5
- intrinsic motivator*6
- periphery*7
- mystifying*8
- rudimentary*9
- rubble*10
- yearning*11